美しい世界・4〜おまけ〜

             BY:氷高颯矢

 セイフォンを獣の群れから何とか救出する事に成功したコーネリアとリズリー。
「大丈夫?セイフォン」
「…っ!」
 じわっと目の端に涙が滲む。
「大、丈夫じゃない!」
 勢い良くコーネリアに抱き付くセイフォン。
「きゃぁっ!セイフォン…放して〜」
「毛玉が…毛玉が…!」
 すごい勢いで飛びつかれたのでコーネリアはびっくりした。セイフォンに同情はするが、長時間抱き付かれるのはゴメンだった。(呼吸困難になる)
「離れなさい!」
 ペシッとセイフォンの頭を叩くリズリー。セイフォンはしぶしぶコーネリアを放した。

「男ならしゃきっとしなさいっ!!」

 リズリーに喝を入れられる。コーネリアは目をしばたたかせた。男嫌いで、セイフォンの事を女の子だと勘違いしていたリズリーが、セイフォンを男の子だと理解して、認識していたのが驚きだったのだ。
「さぁ、課題の品は全て揃ったわ。後は提出するだけ。早く帰りましょう。移動に時間を取られるんだから」
「うん…了承した」
 セイフォンは立ちあがると付着しているカチャトリアの毛を手で払った。そして、馬を止めて来た方へ歩き始める。リズリーは既にそっちに向かって歩き出していた。
「ちょっ…待ってよ!一人にしないで〜!
 コーネリアは急いで駆け出す。身長差がある2人とは明らかにコンパスの差がある。つまり、普通に歩いていては追いつかないのだ。
「コーネリア!」
 セイフォンが振り返る。立ち止まって待っていてくれる。
「行くぞ」
 スッと差し出された綺麗な手。木漏れ日の差し込む森の中で微笑むセイフォンは絵画を切り取ってきた様に美しくそこに存在している。
「うん…」
 コーネリアはおずおずとセイフォンの手を取る。握られた手はやはり美しかったが、男の人の手だった。
(院に居た『お兄さん』とはやっぱり違うなァ…)
 横顔を覗く。やはり整った美貌だが、最初に見た時の様に女性と見紛う事はない。
『綺麗なお兄さん』…っていうのも、悪くはないかもね☆)
 コーネリアはふふっと仔猫の様に笑った。

リズリー=クウァイエル、君は僕の指導を受ける事になった。雪組は君のような優秀な人材を歓迎するよ」
 マリウスが握手を求める。リズリーは引きつるような笑みでその手を取った。
「宜しくご指導下さい、マリウス先生」
 次に、コーネリアの前にロエンがやって来た。
「貴方は私の組、月組だ。そう硬くなる事はない」
「はい。よろしくお願いします!」
 そして、最後に――。
セイフォン=ルヴィオール…君は風組だ。よろしくな」
 セレヴィがセイフォンの肩をポンと叩く。

3人とも別々の組になっちゃったね」
「そうだね。でも、組が別だからって仲良くできない訳じゃないし。寮でも会えるし、いいじゃない」
「そうだよね!」
 2人ははしゃぎながら帰って行った。一方、セイフォンは一目散に部屋に帰って行った。

 部屋に戻ると、ちょうど良いタイミングでフィスがお茶を淹れようとしていた。
「おかえりなさい、セイフォン」
「ただいまっ!」
「あ、お茶淹れますけど、飲みますか?」
「うん!」
 セイフォンはそう言うと席につく。
「どうでした?」
「ん?」
組み分けです」
「ああ、そうなんだ!私は『風組』になってしまったのだ」
「風組…そうですか。私は雪組でしたよ」
 フィスは少し残念だったが、その結果は予想通りでもあった。
(まぁ、セイフォンが雪組というのは想像もつかないですけどね…)
「あ〜どうしよう、フィス!私はよりによってあの男の組になってしまったのだ。ルクスに言われていたのに…『セレヴィ=サッシュには近付くな』と…」
「えっ?」

(――ルクス?誰だ、その男は!)

「どうしよう…なぁ、どうすれば良いと思う、フィス?」
 ウルウルとした瞳で上目遣いに見つめられて、フィスは一気に心拍数が上がったのを感じた。
「えっ?あ、あの…そうは言われても…」
「あ〜ルクスに何て話そう…」

(だから、ルクスって誰なんですかっ…!)

はい、オマケです。
もう最近、開き直ってきたよ。
セイフォンに女の子が寄って来るのは多分、平気だと思うんですよ。
でも、男にはフィスは容赦ないと思うんですよね。